こんにちは。ヒデです。
以前に『2020年4月からフレイル健診が始まります』という記事を書きました。
このフレイルの中に『オーラルフレイル』というものがあります。
今回は、この『オーラルフレイル』について書きたいと思います。
もくじ
オーラルフレイル
これまで日本歯科医師会が取り組んできた『8020運動』
1989年、厚生省と日本歯科医師会が『8020(はちまるにまる)運動』というものを始めました。
CMでもやっていましたので、聞いたことある方も多いと思います。
これは、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という目標をもって歯科治療を行っていこうというものです。
この8020運動が提唱されたころは、80歳で自分の歯が20本以上残っている割合が10%もありませんでした。
たしかに、昔の高齢者は、ほとんどの方が入れ歯だったようなイメージがあるのではないでしょうか。
これが、2016年には半分以上の80歳が20本以上の自分の歯が残っているようになりましたので、大したものです。
こうして、日本歯科医師会が取り組んできた『8020運動』は実を結びました。
しかし、高齢化とともに、自分の歯が残っている方が増えてきても、加齢による口の変化が様々な健康障害をもたらすことがわかってきました。
そこで提唱された病態が『オーラルフレイル』であり、これに対して日本歯科医師会がしっかり介入しようとしているのです。
オーラルフレイルって何?
簡単に話をすると、老化とともに口の中の環境は変化し、歯の数だけでなく、噛む力、飲み込む力などが衰えてきます。
これにより様々な健康障害が出てくるため、この状態を『オーラルフレイル』として、注目されるようになってきました。
口の老化は、栄養摂取にも悪影響を及ぼすため、全身の病気につながっていきます。
ですから、このオーラルフレイルの状態を早く見つけて、介入していくことが健康寿命を延ばすことにつながっていくという考え方です。
オーラルフレイルになると、どんなことが起こる?
オーラルフレイルになると、次のようなことが起こりやすくなることがこれまでの研究でわかっています。
やはり栄養状態が悪くなると、このようなリスクが増えるんですね。
ですから、オーラルフレイルに早く介入することが必要なんですね。
オーラルフレイルになぜなってしまうのか?
下の図が、オーラルフレイルの内容を示したものになります。
(神奈川県歯科医師会 オーラルフレイルハンドブックより)
この一連の状態を簡単に説明すれば、以下のようになるでしょうか。
Ⅰ.高齢になってくると、社会に出ることが減り、口の健康の関心も減ってきます。
例えば、会社に行くときには口臭などを気にしていた方でも、出歩く頻度が減るとあまり気にされなくなったりしますよね。
しゃべる機会も減り、口を動かす頻度も減ってきます。
また、よほど歯が痛いなどが無ければ、歯医者さんに行くこともなくなってきます。
Ⅱ.そうしているうちに、歯が悪くなり噛みにくくなっていたり、食べるときに少しむせるなど些細な口のトラブルが起こってきます。
しかし、これも歳のせいだとあまり気にされない方が多くおられます。
噛みにくいのであればあまり噛まなくてよい食事を、むせるのであればむせにくいようなとろみのついた食事を食べることで解決しようとします。
Ⅲ.このような工夫は良いのですが、それが多くなると、より口の機能が低下してきます。
噛む力、飲み込む力が落ち、虫歯などがあってもあまり気にならなくなってきます。
すると、栄養素が不足し、筋肉が落ちるようなサルコペニアが起こり、より噛む力が落ちていくという悪循環になります。
Ⅳ.食べる力が落ちると、栄養不足による全身の筋力の低下も起こりますので、寝たきりになり、要介護になりやすい。
オーラルフレイルは悪循環を断つ必要がある
オーラルフレイルには次の様な悪循環が状態を悪くすると言われています。
最初はささいな口の中のトラブルから始まります。
これを放置していると、徐々にしっかりと噛めなくなります。
これに対して、食べやすいものを食べるようになります。つまり、軟らかいものが多くなります。
これにより噛む力が低下します。
また、食べやすいものを中心に食べるようになると、栄養の偏りも出てきます。
この栄養の偏りも、筋力の低下につながり、やはり噛む力が低下します。
これにより、ますます噛めなくなるという悪循環が背景にあることが多いと言われています。
この悪循環が続くと、食欲がどんどん低下し、また筋力が落ちるということにもなります。
オーラルフレイルかどうかを知る方法
自分自身、またはご両親や祖父母がオーラルフレイルかどうかチェックする方法を紹介します。
次の項目のうち、2項目が当てはまればオーラルフレイルの疑いがあると言われています。
- 残っている歯が20本未満
- 噛む力が弱い
- 舌の力が弱い
- 滑舌が悪くなっている
- 固い食品が食べづらい
- むせが増えてきた
しかし、少し抽象的ですよね。
では、次のようなチェック項目で調べる方法もあります。
これで4点以上あるとオーラルフレイルの危険性が高いとされています。
こちらの方が少し具体的でわかりやすいのではないでしょうか。
一度チェックしてみてくださいね。
オーラルフレイルの診断は?
オーラルフレイルを実際に診断しようとすると、特別な検査器具が必要となります。
何を見るかですが、次の7項目をチェックし、3項目以上あてはまればオーラルフレイルと診断されます。
- 口腔内が不潔かどうか
- 口腔内が乾燥しているか
- 噛む力が落ちているか
- 下と唇の動きが落ちているか
- 舌の力が落ちているか
- 噛み砕く機能が落ちているか
- 飲み込む力が落ちているか
気になる方は、一度、近くの歯科医院で相談されることをおススメします。
フレイル健診でもオーラルフレイルのチェック項目がある
実は、2020年度から始まるフレイル健診でも、オーラルフレイルをチェックする項目が用意されています。
- 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか (さきいか、たくあんなど)
- お茶や汁物等でむせることがありますか
この2つだけですが、やはりオーラルフレイルもチェックしようとしているんですね。
口の健康を保つことで、健康寿命を延ばしましょう。
では、みなさん、今日も元気にお過ごしください!