こんにちは。ヒデです。
2020年度から75歳以上を対象に『フレイル健診』が始まります。
参考 ➡フレイルって何?
フレイル健診では15問の質問に答える形で行われると思われます。
では、実際にどのような内容の質問があるのでしょうか?
1問ずつ細かく見ていきましょう。
もくじ
- フレイル健診の質問項目
- ①あなたの現在の健康状態はいかがですか?
- ②毎日の生活に満足していますか?
- ③1日3食きちんと食べていますか?
- ④半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか?
- ⑤お茶や汁物等でむせることがありますか?
- ⑥6か月間で2~3kgの体重減少がありましたか?
- ⑦以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?
- ⑧この1年間に転んだことがありますか?
- ⑨ウォーキングなどの運動を週に1回以上していますか?
- ⑩周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われていますか?
- ⑪今日が何月何日かわからない時がありますか?
- ⑫あなたはタバコを吸いますか?
- ⑬週に1回以上は外出していますか?
- ⑭ふだんから家族や友人と付き合いがありますか?
- ⑮体調が悪いときに、身近に相談できる人がいますか?
フレイル健診の質問項目
①あなたの現在の健康状態はいかがですか?
- よい
- まあよい
- ふつう
- あまりよくない
- よくない
これまでの研究で、健康状態が『よい』と回答した人の方が、『よくない』と回答した方より長生きすることがわかっています。
この質問は主観的な健康状態を把握し、他の質問とあわせて『よい』にならない理由を探していくための質問です。
また、この回答した状態が最近起こり始めたものか、以前から長い間続いているものかの聞き取りも行われ、参考にされるようです。
②毎日の生活に満足していますか?
- 満足
- やや満足
- やや不満
- 不満
この質問は、心の健康状態を把握するために設けられた質問です。
うつ病の評価をするためにも、同様の質問がされます。
フレイルのある高齢者は、フレイルのない高齢者より、うつ病を有する確率が高いことがわかっています。
また、うつ病があると、年々ADLが大きく低下していくことがわかっています。
この質問を行い、面接時の表情などに注目してうつ病の可能性を把握する意味合いがあります。
③1日3食きちんと食べていますか?
- はい
- いいえ
質問⑥の体重変化と、質問④⑤の口腔の機能をセットにして、栄養状態を把握します。
また、質問②とセットで、うつ状態による食欲低下がないかを把握します。
食事の多様性が減ると、フレイルのリスクが上がることがわかっているため、面接では食事内容に関しても聞かれると思われます。
④半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか?
- はい
- いいえ
ちなみに、ここでいう『固いもの』としては、「たくあん」や「さきいか」などが想定されています。
この質問で、噛む力をチェックします。
なお、質問⑤とセットで口腔機能を把握します。
噛む力が落ちてくると、柔らかいものを好んで食べるようになり、ますます噛む力がおちるという悪循環になります。
『はい』と答えた人にフレイルの確率が高いとされています。
この質問に『はい』と答えた方には、噛み合わせや入れ歯の状態、かかりつけの歯科医があるかなどの質問が行われることが予想されます。
また、口腔機能の低下『オーラルフレイル』というものが注目されています。
オーラルフレイルとは、口腔機能が低下することにより、栄養状態が悪くなり、これにより体重が低下したりしてサルコペニアとなり、全身のフレイルにつながるとされています。
また、オーラルフレイルが起こった方の死亡率は高いことがこれまでの研究でわかっています。
⑤お茶や汁物等でむせることがありますか?
- はい
- いいえ
この質問は、嚥下機能の状態を把握するためのものです。
嚥下機能とは、物を食べるときに飲み込む一連の動きの機能のことです。
この嚥下機能が落ちると、食事の時の「むせ」が多くなるようになります。
「むせ」は飲み込んだ時に、誤嚥(食べ物が気管に入る)した際に起こる咳です。
この「むせ」が多くなると、誤嚥性肺炎や窒息などを起こしやすくフレイル、サルコペニア、要介護状態になりやすいことが報告されています。
質問④とセットにして『オーラルフレイル』のリスク評価の1つになります。
この質問に『はい』と答えた方には、一口の量や食事の速さなどの質問が追加で行われ、食事の時に工夫する方法などの指導が行われると思われます。
例えば、「ゆっくり食事をする」や「食べるときの一口量を減らす」などです。
NHK出版 なるほど! の本 あなたの老いは舌から始まる―今日からできる口の中のケアのすべて (NHK出版なるほど!の本)
⑥6か月間で2~3kgの体重減少がありましたか?
- はい
- いいえ
この質問は、フレイル状態を見分ける『簡易フレイルインデックス』にも採用されている質問で、栄養状態を把握するためのものです。
栄養が少ない低栄養状態になると、筋肉量が減り、体重が減ります。
筋肉量が減ると、サルコペニアになりやすく、将来的に要介護状態や寝たきりになりやすくなります。
筋肉量の減少は気づきにくいため、わかりやすい体重変化を質問にしています。
質問③とあわせて、欠食や食事内容に偏りがないかなどのチェックも重要になります。
この質問に『はい』と答えた方には、食欲の有無や、食事内容の変化、生活習慣ほ変化などの質問が追加で行われることが予想されます。
食欲の低下などの原因として、心の健康状態(質問②)や口腔機能(質問④⑤)などが関与している場合もあるので、この辺りの質問の回答とあわせて、その解決方法を探すことになります。
欠食が多い場合、宅配弁当など簡単に摂れる食事の提案なども1つの解決方法です。
⑦以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?
- はい
- いいえ
この質問は、フレイル状態を見分ける『簡易フレイルインデックス』にも採用されている質問で、運動能力や体力を把握するためのものです。
また、歩行速度はサルコペニアの診断基準の1つにもなっています。
歩行速度が遅い高齢者は、フレイルになるリスクが高く、亡くなるリスクが高いことが知られています。
また、質問⑧⑨とあわせて、運動能力や転倒リスクを評価する指標として使われます。
この質問に『はい』と答えた方には、その原因を訪ねる質問が追加されると思われます。
例えば、「息切れがありますか?」や「膝が痛いとかありますか?」などです。
この結果によっては、適切な診療科を受診することをすすめることになります。
⑧この1年間に転んだことがありますか?
- はい
- いいえ
この質問は、今後の転倒のリスクを把握するためのものです。
転倒による骨折は、要介護状態になる原因の第4位となっています。
質問⑦⑨とあわせて、運動能力や転倒リスクを評価する指標として使われます。
この質問に『はい』と答えた方には、
- 転倒した時に骨折したか?
- 転倒した状況や場所
- 転倒の頻度
などの質問が追加されると思われます。
転倒する危険因子としては、
- 足の筋力
- バランス能力
- 歩く能力
- 視力の問題
- 認知の問題
- 薬の影響
などなどがありますので、何が影響しているかを把握して、それぞれどう対処していくべきかを助言することになります。
⑨ウォーキングなどの運動を週に1回以上していますか?
- はい
- いいえ
この質問も、フレイル状態を見分ける『簡易フレイルインデックス』にも採用されている質問です。
運動習慣があるとフレイルが予防され、要介護状態になるリスクが下がるというデータがあります。
この質問に『いいえ』と答えた方には、ウォーキング以外の運動を行っているか、日常的に座りすぎていないかなどを確かめます。
参考➡ 座る時間が長いと寿命が縮む!運動してても… ~座位行動が問題~
運動習慣がない方には、不安なく運動できる場をすすめるなどを行うことになります。
⑩周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われていますか?
- はい
- いいえ
この質問に関しては質問⑪と一緒に解説します。↓
⑪今日が何月何日かわからない時がありますか?
- はい
- いいえ
質問⑩と⑪はいずれも認知機能の低下を把握するためのものです。
「軽度認知障害」とよばれる認知症の手前の状態があります。
この状態の時に早く介入することで、認知症になることを予防できることがあります。
運動の介入も認知機能の改善に効果があるという報告もあり、その辺りの指導も必要になってきます。
⑫あなたはタバコを吸いますか?
- 吸っている
- 吸っていない
- やめた
この質問はそのまま、喫煙習慣を把握するためのものです。
ちなみに、この「タバコ」には加熱式タバコや電子タバコも含まれます。
「やめましたよ。」という方によく聞くと、「IQOSに変えました。」という場合がありますので、きちんと聞く必要があります。
喫煙はご存知の通り、肺気腫や肺がんなどのがんと関係しているだけでなく、糖尿病にもなりやすいというデータがあります。
現在吸っている方には、禁煙の必要性を説明し、禁煙の意思があれば、禁煙外らの受診などがすすめられることになります。
⑬週に1回以上は外出していますか?
- はい
- いいえ
この質問は、閉じこもりの恐れを評価し、社会的フレイルの状態を把握するためのものです。
週に1回以上外出しない高齢者は、歩行障害や認知機能障害が起こりやすいことがわかっています。
この質問に『いいえ』と答えた方には、地域のサロンやサークルへの参加などを促すことになると思われます。
⑭ふだんから家族や友人と付き合いがありますか?
- はい
- いいえ
この質問も、社会参加の有無をチェックし、社会的フレイルの状態を把握するためのものです。
ボランティア活動などに進んで参加した高齢者は、要介護になりにくいというデータがあります。
ボランティア活動に限らず、社会参加が高齢になるとどうしても低くなってきます。
この質問に『いいえ』と答えた方には、家族構成を把握したり、質問⑬と同様に地域のサロンやサークルへの参加などを促したりすることになると思われます。
⑮体調が悪いときに、身近に相談できる人がいますか?
- はい
- いいえ
この質問は普段から社会的支援(ソーシャルサポート)があるかどうかを把握するためのものです。
ソーシャルサポートが無いと、心理的に苦痛を感じることが多いというデータがあります。
また、この質問に『はい』と答えた方も、その多くは同じく高齢の配偶者であり、そのソーシャルサポートが誰なのかも把握する必要があります。
必要あれば地域包括支援センターなどの相談窓口を紹介することになると思われます。
フレイルを早期に発見するための『フレイル健診』。
これにより健康寿命が延びることを祈ります!
では、みなさん、今日も元気にお過ごしください!