こんにちは。ヒデです。
前回に続いて『急性心筋梗塞』の話をしたいと思います。
前回、急性心筋梗塞に合併する『致死性不整脈』が生死を分けることを話しました。
⇒急性心筋梗塞は若い人でも急に命を落とす。 生死の境はどこ?
今回は、実際の救急室で経験する『致死性不整脈』が起こった患者さんのことを踏まえて、『致死性不整脈』について詳しく説明していきます。
もくじ
急性心筋梗塞の合併症『致死性不整脈』
致死性不整脈とは?
文字通り、命に関わる不整脈です。
不整脈は色々とありますが、通常、治療対象となる不整脈を大きく分けると次の3種類でしょうか。
- 脈の速い不整脈:心室頻拍、心室細動、発作性上室性頻拍 など
- 脈の遅い不整脈:完全房室ブロック、洞不全症候群 など
- 脈がバラバラな不整脈:心房細動 など
もちろん、他にも色々あるのですが、大まかに分類してみました。
この中で、特に心筋梗塞の時に合併することが多いのが 心室頻拍、心室細動、完全房室ブロックです。
そして、致死性不整脈とは、このうちの主には 心室頻拍、心室細動 であり、この不整脈に対してはAEDが必要となります。
*AEDのある場所などはこちらの記事にありますので、参考にしてください。⇒急性心筋梗塞は若い人でも急に命を落とす。 生死の境はどこ?
実は、AED、Amazonで購入できたりもします。( ゚Д゚)
なぜこれらの不整脈が『致死性』なのか?
先ほど書きましたように、心室頻拍、心室細動といった不整脈は脈が速い不整脈です。
なぜ脈が速すぎると、命に関わるのでしょうか?
心臓は血液を全身に送るポンプですよね。
そこで、身近なポンプを例にとって説明しましょう。
おそらく、自転車の空気入れは誰でも一度は使ったことがあるポンプではないでしょうか。
自転車の空気を入れるときには、一定の速さ以上でレバーを上げ下げすることで効果的にタイヤに空気を入れることができます。
しかし、これをどんどん速くしていけばどうなるのでしょうか?
途中までは非常に効果的に空気を送ることができます。
ところが、あまりに速くレバーを動かそうとしても空気はあまり送れなくなります。
それは、レバーを一番上まで上げる時間が無くなるからです。
レバーを一番上まで上げずに何度レバーを上下しても効率が悪いですよね。
心臓も同じように、左心室が拡がったり(拡張したり)縮んだり(収縮したり)して血液を全身に送ります。
脈があまりに速くなりすぎると、この拡がる時間が十分でないと、左心室にある血液が少ないまま縮んでしてしまいます。
すると、心臓から出ていく血液が少なくなるので、血圧が低くなり、脳をはじめとする主要な臓器に十分な血液が行かなくなります。
これが続くと命を落とすわけです。
致死性不整脈に対してはなるだけ早い除細動(電気ショック)が必要!
この速い不整脈は、なるだけ早くに止めて、全身にしっかり血液を流してあげる必要があります。
そこで出てくるのが除細動器と言われる電気ショックをかける器具です。AEDもその一種になります。
除細動器とは、ドラマで時々見る、胸に二つのアイロンみたいな電極を当てて、体に電流を流す器具です。
実際電気を流すと、全身がドンっと動きます。
まあ、例えるならば、低周波マッサージ機の巨大なものと考えてもらえばわかりやすいかと思います。
低周波マッサージ機を例えば肩につけて開始すると、勝手に肩の筋肉がピクピク動きますよね。
その巨大なものを胸につけて大量の電流を流すので、全身の筋肉が一気にビクッ!と動くのです。
胸にあてる二つの電極は、その間に心臓を挟む形で使います。
そこで、心臓に大量の電流を流して、一旦心臓の筋肉が一気に動く(縮む)ようにします。
そうすることで一度心臓の状態をリセットして、もう一度自分の正常のペースで動くようにするのがこの除細動の目的なんです。
ちなみに、AEDの場合は、AED自身がその時の脈が除細動の必要な不整脈かどうかを判定してくれます。
AEDが除細動必要と判断した時のみ、除細動をかけるためのスイッチが光って、それを押すことで除細動されます。
ですから、間違って使うと危ないものとあまり思わないようにしてください。
不必要な時には、除細動かからないようになっていますので!
急性心筋梗塞の患者さんは突然、致死性不整脈が出る!
では、心筋梗塞の患者さんに致死性不整脈が起こるとどのようになるのでしょうか。
救急外来で致死性不整脈が起こった時の様子はこんな感じです。
胸が痛いと言ってこられた患者さんですが、心電図などから急性心筋梗塞と診断しました。
そのため、心臓のカテーテル治療の準備を行い、本人と家族にその説明を行っていたところ、急にその患者さんは意識を失い、全く動かなくなります。
心電図で、致死性不整脈が認められ、すぐに心臓マッサージなどを開始。
除細動を行うことで意識は回復します。
つまり、致死性不整脈が起こると、これまで普通に話していた方が意識を失うのです。
そして、除細動されると意識は回復するのですが、致死性不整脈を繰り返すことがあります。
ですから、意識が回復していなければ、除細動後も心臓マッサージは続けるのが基本です。
致死性不整脈が起こるのは急性心筋梗塞の時だけではない
ここに少し前のデータですが、国士舘大学が救護活動を行った市民マラソン大会のデータをお示しします。
実は、日本のマラソンでは10万人に1~2人の割合で心肺停止になると言われています。
このデータでも48,000人に1人の割合ですから、ほぼ同じようなデータですね。
つまり、参加人数の多い東京マラソンや大阪マラソンでは1~2回に1人は誰かが心肺停止になっている計算ですね。
注目してほしいのは、走る距離が長いほど多くなるわけではなく、年齢も高いから多くなるわけでもないところです。
やはりマラソンは怖いですね…。(個人的な感想ですが…)
しかし、この多くの方は急性心筋梗塞ではないと言われています。
肥大型心筋症という心臓の筋肉が分厚くなる病気の方が多いようです。
肥大型心筋症の方が、マラソン中に急に致死性不整脈を起こし、心肺停止状態になることが多いとのデータがあります。
この肥大型心筋症は、心臓のエコー検査を行うことで見つかることがあります。
ただ、なかなか心臓のエコー検査をされたことがある方は少ないと思います。
しかし、健診で行う心電図の異常で見つかることがあります。
ですから、健診などで心電図の異常を指摘された方は、必ず病院で検査を受けましょう。
ほとんどの方は問題ないですが、ごく一部の方にこういう怖い病気が隠れていますので…。
致死性不整脈は急に命を落とします。怖いですね。
これまで経験したこのないような胸の痛みがあるような場合は、無理せずすぐに救急車を呼びましょう。
では、みなさん、今日も元気にお過ごしください!
~参考記事~
急性心筋梗塞は突然起こる⁉ 前兆はないの? 狭心症との違いは?