こんにちは。ヒデです。

皆さんは、周りに心臓の病気になった方、または、現在通院している方がおられないでしょうか。

そんな方に対して、次のように考えてはいないでしょうか?

「心臓の病気になったら、運動なんてしてはダメよ!」

「なるだけじっとしておく方が、安全よね。」

そんな考えの方が多いのではないでしょうか。

そうですよね。そう考えるのが普通かもしれません。不安ですものね。

しかし、最近ではこういう考え方はせずに、『しっかり適切な運動をしましょう』とされています。

実際、病院では『心臓リハビリテーション』というものが保険診療で行われています。

今回は、この『心臓リハビリテーション』について、書きたいと思います。

心臓リハビリテーション

『リハビリテーション』と聞いて、どんなものを想像しますか?

まず、皆さんは『リハビリテーション』という言葉を聞いて、どんなことをイメージされますか?

例えば、次のようなものではないでしょうか。

・骨折などの怪我でなどの後に骨折前の機能を取り戻すための『リハビリテーション』

スポーツ選手がけがをした後に『リハビリに励んでいます』とか、ニュースになりますよね。

・脳梗塞の後、麻痺や拘縮(手などが動かなくなること)を和らげる『リハビリテーション』

有名な方では、読売巨人軍の長嶋茂雄さんが、脳梗塞の後に『リハビリテーション』を行い、大衆の前に戻ってこられた時は感動した方も多いでしょう。

・長期入院された高齢の患者さんが、安定して歩けるようになるための『リハビリテーション』

高齢者が長期の入院を余儀なくされると、筋力が落ちて、歩くことすらままならなくなります。ご家族で入院中に歩行訓練などの『リハビリテーション』をされていた方もおられるのではないでしょうか。

簡単に挙げるとすると、こんなところでしょうか。いずれも、不自由になった体の機能を取り戻すためのものですよね。

心臓のリハビリテーションって何?

しかし、ほとんどの心臓の病気は、外見は健常者とほとんど変わらない方が多いですよね。

(もちろん、中には息切れがひどくて身の回りのことができない方もおられますが。)

では、心臓の病気になった方の『リハビリテーション』って、どんなものでしょうか?

その内容は、運動、生活の指導、ご自身の病気についての勉強などを行うことです。

少し他の『リハビリテーション』とはイメージが違いますね。

心臓リハビリテーションは不安を取り除き、再発を防ぎます

このように、以前に心筋梗塞や狭心症、心不全、心臓の手術などを行った方は、自信を無くし、不安が強くなります。また、入退院を繰り返すと体力が落ちます。

これに対して、病院で医療従事者に見守られながら運動を行い、生活するにあたっての注意点をしっかり理解していただき、ご自身の病気について理解を深めていただきます。

こうすることで、体力を回復させ、不安を取り除き、自信を取り戻してもらうことによってご自身の好きなことをできるような生活に戻ってもらうこをが目的になります。

しかも、こうすることにより、心臓の病気の再発が予防できることがわかってきたのです。

心臓リハビリテーションの内容 (運動について)

心臓リハビリテーションの内容、メニュー

これが、私の病院で行っている心臓リハビリテーション(運動)の内容になります。

  1. 看護師や理学療法士により、その日の体調や血圧などを確認します
  2. みんなで準備運動を行います
  3. メインの有酸素運動はエアロバイク(自転車エルゴメーター)を用いてそれぞれの方にあわせた負荷でおこないます
  4. それぞれの方にあわせた負荷の筋力トレーニングをマシンやゴムチューブなどを使って行います
  5. 最後はみんなで整理体操です

多くの病院では、このような内容を1時間ほどかけて行っていきます。

同じような心臓の病気を持つ方が、一緒にがんばっているのを見て、皆さん励みになるようです。

この中でメインとなるのは有酸素運動です。

有酸素運動は比較的心臓への負担が少なく、内臓脂肪を減らすのに有効で、血圧上昇や血糖値の上昇、中性脂肪の上昇を防ぐ効果もあります。

これらがしっかり管理されることで、心臓病の再発を防ぐ効果があります。

また、息切れしにくくなり、活動の範囲が上がり、体力が改善することも報告されています。

心臓リハビリテーションの内容 (病気の知識などについて)

有酸素運動をしている最中に、理学療法士や看護師などと話をし、いろんな生活指導を行っていきます。

また、病院によってはいろんな職種が患者さんやその家族に簡単な講義をしているところもあります。

私の病院でも医師、看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士、臨床工学技士が当番で週に1回講義をしています。

その内容を少し挙げると、次のようなものです。

  • 心臓リハビリテーションとは
  • 心臓マッサージのやり方、AEDの使い方
  • 薬の飲み忘れを防ぐ工夫
  • 少しの塩でおいしい料理を作る工夫
  • 心臓の病気の方が受ける検査の内容

などです。

参加者の皆さんは、真剣に聞いておられ、役に立つと好評です。

心臓リハビリテーションの効果

これまで、様々な効果が報告されていますので、その一部をご紹介します。

下のグラフは心筋梗塞を起こした方の生存率をみた研究の結果です。

心筋梗塞に対する心臓リハビリテーションの効果

左の有酸素運動をしなかった方の方が、右の下方と比べて、生存率が低いことがわかります。

つまり、心筋梗塞を経験された患者さんが有酸素運動を継続すると、長生きできる確率が上がることを意味します。

下のグラフは狭心症に対してステント治療(カテーテル治療)を行った後、有酸素運動の効果をみた研究結果です

狭心症の患者さんの心臓リハビリテーションの効果

いずれも赤のグラフが有酸素運動をしなかった方、青のグラフが有酸素運動をした方です。

左のグラフは、有酸素運動をした患者さんの方が、将来、心臓病で命を落としにくいことを意味しています。

右のグラフは、有酸素運動をした患者さんの方が、長生きできることを意味しています。

下のグラフは、心臓の動きが悪い心不全の患者さんが有酸素運動をした時の効果をみた研究結果です。

心不全に対する心臓リハビリテーションの効果

左のグラフは有酸素運動をした患者さんの方が心臓病の再発が少なく、心臓病で亡くなることが少なかったことを意味しています。

右のグラフは有酸素運動をしなかった方の心臓の動きが徐々に悪くなるのに対して、有酸素運動をした方の心臓の動きは比較的保たれていることを意味しています。

他に、実際心臓リハビリテーションをしていて感じることは、心臓病の後、不安が強かった方が、しばらく他の方と一緒に運動をしていることで、非常に前向きになる方が多いです。

予防に関しては、なかなか効果を感じることは難しいですが、このような精神的な部分は早期に回復する方が多く、これにより普段の活動量が増えていきます。

「これまで、できなかったことが安心してできるようになった」などの意見は多数聞かれ、私たちスタッフも喜んでおります。

心臓リハビリテーションの対象(受けていただける方)

病院で通院による心臓リハビリテーション(運動)の対象となるのは、以下の病気などがある方になります。

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 心臓血管外科手術後(冠動脈バイパス術、弁置換術、大動脈解離や大動脈瘤の術後など)
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 心不全

まず、心筋梗塞については、通常は発症後の入院中に心臓リハビリテーションが開始されることがほとんどです。

その後、外来通院になった時に通院による心臓リハビリテーションへ移行します。

以前に心筋梗塞をされた方(陳旧性心筋梗塞)も対象になりますので、一度主治医の先生にご相談ください。

狭心症の方は、カテーテル治療(ステント留置)を行ったことがある方のみではなく、ニトロなどを用いた内服で治療を行っている方も対象になります。

心臓血管外科で手術を受けた後の方も対象です。

狭心症、弁膜症(大動脈弁狭窄症、僧房弁閉鎖不全症など弁の病気)、大動脈の病気などで手術された方です。

この方も心筋梗塞の方と同様、手術後、入院中に比較的早く心臓リハビリテーションが開始されることがほとんどです。

退院後は、外来通院によるリハビリテーションに移行していきます。

心筋梗塞の時と同様、以前に心臓血管外科で手術を行った方も対象ですので、主治医の先生にご相談ください。

閉塞性動脈硬化症とは、足の血管が細くなり、しばらく歩くと足に痛みやしびれが出て、休憩するとまた歩ける病気です。

これに対しては、内服薬による治療、カテーテルによる治療があります。

いずれの方も心臓リハビリテーションの対象となります。

心不全で入院したことがある方や、心臓の機能が悪い方も対象です。

参考の値としては、BNPという採血のデータが80以上、または、心臓のエコーで収縮能(EFといいます)が40%以下の方になります。

BNPは似ているものにNT-proBNPというものがありますが、これは別物ですので注意してください。

心臓リハビリテーションの費用

最初に触れたように、心臓リハビリテーション(運動)は、健康保険が利用できます。

通常は、1回1時間で行われますが、3割負担の方で約2000円ほど、1割負担の方で約700円ほどの支払いが必要です。

ですから、3割負担の方には少し高くついてしまいますね。

心臓リハビリテーションの頻度と期間

心臓リハビリテーションが健康保険適応となる期間は、基本的には開始後150日間となっています。

150日までは、何日でも行うことができます。

理想的には3-5日/週の運動が必要と言われていますが、なかなかそれだけ病院に通院して、費用を払うのは厳しいでしょう。

ですから、週に1-2回通い、そこで普段の運動の方法を理学療法士などに教えてもらい、自宅でもウォーキングなどを行われることをお勧めしています。

150日の後は、自宅で継続していってもらうことが重要になります。

150日を超えても、効果が認められれば、4回/月までは心臓リハビリテーションの継続も可能ですので、病院のスタッフに相談してみてください。

心臓リハビリテーションができる病院

心臓リハビリテーションを受けることができる病院は増えています。

一部のクリニックでも可能になってきています。

こちらに一覧がありますので、参考にしてください。

 

~心臓リハビリテーションについての本の紹介~

心臓リハビリテーション指導士受験のためには欠かせない本
心臓リハビリテーション必携―指導士資格認定試験準拠

心臓リハビリテーションに携わるスタッフに1冊あれば助かる本
心臓リハビリテーションポケットマニュアル

心臓リハビリテーションを基礎から学ぶためのスタッフ向けの本
循環器ナーシング2017年3月 Vol.7No.3 特集:心臓リハビリテーションの運動療法~初心者さん・苦手さんのための基礎の基礎! ~

一般の方向けに心臓リハビリテーションを解説してくれている本
イラストでわかる患者さんのための心臓リハビリ入門

 

心臓病をお持ちの方は、健康寿命を延ばすためにぜひご利用ください。

しかし、我が国の心臓リハビリテーションはまだ発展途上です。

ドイツの心臓リハビリテーションと比較して、今後の課題についても書きました。

参考 ➡日本の心臓リハビリテーションの今後に期待されること ~ドイツを例に~

では、みなさん、今日も元気にお過ごしください!